『みんなを幸せにするインクルーシブ教育』書評：武蔵野東学園の挑戦と実践記録

「武蔵野東学園」は、東京都武蔵野市にある私立の幼稚園・小中学校を持つ学園法人であり、60年以上前からインクルーシブ教育を実践してきた先駆的存在です。本記事では、その実践の記録とも言える書籍『みんなを幸せにするインクルーシブ教育』をご紹介します。

武蔵野東学園で育つASD児と定型発達児の共生

武蔵野東学園の幼稚園では、ASD（自閉スペクトラム症）のある子どもたちが全体の13%を占めています。それでもクラス分けをせず、定型発達児と同じ環境で学び・遊び・育っていく「混合教育」を実践しています。

運動会や行事を通じて、子どもたち同士が自然に助け合い、成長し合う姿が紹介されており、教育の理想を地で行く武蔵野東学園の実力が感じられます。

武蔵野東学園の教育は、「混合教育」と「生活療法」を二本柱に構成されています。障害の有無に関わらず共に学び合う場を作ることで、「共生社会」の縮図が築かれています。

これらはすべて武蔵野東学園の現場で何十年もかけて蓄積された実践知であり、単なる理論ではありません。

武蔵野東学園では、教育の質を高めるためにICTの導入も積極的に行っています。教員同士の情報共有、保護者との連絡、動画教材による研修など、未来型教育のモデルとして注目されています。

本書には、武蔵野東学園の保護者や教職員のリアルな体験が豊富に掲載されています。子どもたちが生き生きと育っていく現場の感動と努力が、読む者の胸に響きます。

著者である加藤篤彦園長も、武蔵野東学園で40年にわたって教育に携わってきた人物。小学校教員から園長へと成長していく軌跡が記されています。

多様性が求められる現代社会において、武蔵野東学園が示すインクルーシブ教育はまさに時代の先を行くものです。「誰のための教育か」「子どもの主体性とは何か」といった問いへの答えが、この学園にはあります。

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武蔵野東学園の60年にわたる教育実践は、障害の有無を超えた「共に生きる社会」のモデルケースです。
教育に関心のあるすべての人にとって、本書は必読の一冊です。